当研究室について

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 航空機や自動車などの様々な輸送機器の軽量化を図るため、先進複合材料構造の実用化が進んでいます。しかしその破壊プロセスは極めて複雑であり、外観から損傷状態を判断することは困難です。そこで複合材料構造の安全性と信頼性を確保するため、複合材に適した非破壊検査技術やヘルスモニタリング技術の確立が望まれています。

 当研究室では、現在、複数の企業と共同でこれらの課題に取り組んでおり、特に、超音波工学と光学を融合させることにより、複合材に適した新規非破壊評価診断法の確立を試みています。

研究紹介

ガイド波のモード変換に基づく剥離検知

超音波ガイド波は、構造材料内を長距離にわたり伝播できるため、構造ヘルスモニタリングに有望です。超音波ガイド波には、複数の伝播モードがあり、それらの速度は構造物の板厚や超音波の周波数に応じて変化します。本研究室では、複合材料構造内の剥離部において、ガイド波のモード変換が生じて伝播速度が変化することに注目し、剥離が検知可能なことを示しました。また、スキン・ストリンガー周期構造内を伝播するモードを明らかにする研究も行っています。

ラム波の到達時間遅れによる衝撃損傷の検知

炭素繊維強化プラスチック積層板に衝撃荷重が加わると内部に損傷が発生します。それを外観から見つけることは困難ですが、ラム波(平板を伝播する超音波)を用いることで簡便に検出することができます。検出原理は、ラム波が損傷領域を伝播する際に速度が低下するという現象に基づいています。本研究室で行った数値シミュレーションでは、衝撃損傷部を剛性が低下した領域としてモデル化し、実験結果を再現しています。また、周波数帯域の広い超音波(チャープ波)を入力して、ラム波が損傷部を通ってセンサに到達するまでの時間を効率良く計測する手法を確立し、損傷の大きさとラム波の到達時間遅れの定量的関係を明らかにしています。

AE計測を用いた健全性診断技術

材料中に損傷が発生すると、アコースティック・エミッション(AE)波が励起されます。そこで、損傷形態とAE波形の特徴との関係を調べました。さらに、機械学習によってAE計測データから損傷形態を判断することを試みました。また、CFRP製水素燃料タンクの損傷モニタリングへの応用研究も行っています。

微細き裂検出のための非線形超音波法

超音波の非線形成分に注目することで、超音波の波長よりも小さな微細き裂を検出できます。超音波が微細き裂を伝播する際に、き裂の開閉に伴い、周波数が2倍の高調波が発生します。この高調波成分(非線形成分)を計測することで、き裂の進展を評価できます。

レーザー超音波による非破壊検査

構造物にレーザーを照射すると、レーザーの吸収・発熱による熱膨張が起因となり、超音波が発生します。このレーザー超音波法は、構造物と非接触で超音波を励起できることや、曲面部材にも適用可能なことから、新たな非破壊検査技術として注目されています。本研究室では、特にレーザー超音波の可視化技術を、CFRP航空機部材の検査に適用する研究に取り組んでいます。また、レーザー超音波の発生や伝播挙動の数値シミュレーションを実施し、非破壊検査に最適なレーザー照射条件を検討しています。

高温環境にも適用可能なモニタリング技術の構築

光ファイバをウェーブガイドとして利用すれば、1000℃の高温においても光ファイバ超音波センサでAE波を正確に計測することが可能になります。さらに、レーザー照射による超音波励起と組み合わせることで、高温環境下での超音波の送受信が実現できます。現在、再生FBGセンサ(光ファイバに書き込まれたグレーティングは高温で一度喪失しますが、アニーリング処理で再生します。)とレーザー励起超音波による新たな検査・モニタリングシステムの構築に取り組んでいます。本研究の成果は、今後、高温構造物の常時モニタリングに応用されることが期待されます。

メタルデポジッション

当研究室は、先進ものづくりシステム連携研究センター(CMI)に所属して活動しておりました。(2013年4月プロジェクト発足から2023年3月終了まで)
3Dプリンターによる金属積層造形の研究を行っています。大型かつ複雑な形状の航空機CFRP部材を成型するための治具をニアネットシェイプで作製することで、工期短縮とコスト削減を図ります。